第十六話 再スタート
とりあえず「クチャラー」をググってみた。
http://jin115.com/archives/52091177.html
・口を開けて食べ物を咀嚼しクチャクチャ音をさせる人
・本人は無自覚
・指摘したり直すように言うと逆ギレする
・とにかく不快に思われている
・直した人もいる
おおよそ想像通りの内容だった。女性の顔を見て話せなかったのも慣れで何とかなったのだから、これも何とかしよう。また、彼女ができた時に同じ原因で嫌われることのないように、可及的速やかに(かきゅうてきすみやかに)克服する必要がある。そう例えば、今すぐにでも。
その後、意識して口を閉じてご飯を食べてみたが、口が開いている時との違いがまったく分からなかった。一人暮らしだし、友達もいないので、咀嚼音が漏れていないかを聞く相手がいない。スマホで録音するのもどうかと思うし。仕方がないので、確認は後回しにして、口を閉じて食べる習慣をつけることにした。
確かにクチャラーは大きな問題だが、根本的な問題は別にある気がしていた。自慢じゃないが自分にはいろいろな欠点がある。まあ、クチャラーは想定外だったが、それ以外にもイビキはうるさいし(こっちは家族や同級生からよく言われていた)、方向音痴だし、ペーパードライバーだし、料理もできない。スポーツもダメで特技もない。改めて考えてみると遠坂さんとこれ以上付き合ったとしても何か別の理由で振られてていたと思う。そう、彼女は自分のことが好きではなかったのだ。ただ、これと言って悪い条件がなかったから何度かデートしただけで、ひとつでも欠点が見つかれば、サヨナラなのだ。それこそ自分には欠点なんかいくらでもあるのだから結末は分かっている。
世の中の恋人同士とか夫婦はどうやって何年も付き合い続けられるんだろうか?どんな人間だって欠点の一つくらいはあるだろう。どうやって相手に許容してもらっているんだろうか。逆にどうやって相手の欠点を許容しているんだろうか。お互い「好き」になればいいんだろうか。どうやったら「好き」になってもらえるんだろうか。
悩んでいても仕方が無いので、行動に移すことにした。結構な時間とお金がかかってしまったが高い授業料と思うことにした。たった数回の婚活パーティーで上手くいくほど世の中は甘くなかったのだ。
とりあえず、週末は婚活パーティーに参加することにした。オタク系婚活パーティーのアエルラとシングル、そしてイベント合コンの4seenを組み合わせれば毎週末に活動できそうだった。オーネットとかの結婚相談所はお金がかかるだけで余りいいとは思えなかった。相手の身元は相談所がチェックしてるだろうからあまり変な人はいないのかもしれないが、結局、相手を判断するのは自分だろう。また、メールを使ったネット婚活にも興味はなかった。メールやプロフィールを見ても相手のことも自分のことも分からないし、いざ、会ってみてガッカリとかになったらそれまでのやり取りが無駄になってしまう。とにかく、自分は結婚を希望している独身女性と毎週会えればそれでよかった。
(第十六話 おわり)
第十五話 そして振り出しへ(その1)
第十五話 そして振り出しへ(その2)
閑話休題 その十一(告白)
サトータロー役の辺野々々・ローロ・茂平次(へのへの ろーろ もへじ)です。
私は小中高と共学だったのでほぼ毎日同い年の異性と同じ教室で過ごしていました。今の男性ばかりの職場と比べると夢のような時代です。ところが当時はまったくそんな風に考えたことすらなく学校はただただ苦痛でした。
1クラスは約40人で半分の20人は女子なので可愛い子の一人や二人はいたのですが、自分とはまったく接点がありませんでした。女子と会話した記憶がありません。休み時間は基本、本を読んでいた気がします。
ネットの記事でなど、モテないと言ってる奴は何回告白したのか?何回振られたのか?という言い回しを見たことがありますが、ほとんど女子と接点がないのに「好き」になるはずがないし、見た目が可愛いからというだけでキモい男子から告白されてら相手もショックなのではと思います。
同じ理由でラブレターを出す感覚も分かりません。そういう手紙を出すということは、相手とそれほど親しくないと考えられますが、親しくないのに好きになるっていうのが分かりません。
マンガやアニメやゲームではあまり面識のない相手に「告白」するシーンが定番ですが、あれは不自然ですし現実的でないと今は思います。今はそう思うんですが、学生時代はそうは思っておらず、ブサメンでなければ「告白」をきっかけに女子と付き合ったりデートしたりできると考えていました。順序が逆というかおかしかったんです。
■実際
知り合う→(みんなで)遊ぶ→(ふたりで)遊ぶ、デート→告白→付き合う
■マンガやアニメやゲームからの思い込み
知り合う→好きになる→相手を想う→告白→付き合う→デート
つまり、告白を成功させるために重要なのは事前の十分な根回しということになります。自分がどんなに相手が好きかはどうでもよくて、相手が自分のことをどれだけ気に入ってるか、または興味を持っているかが全てな訳です。たとえイケメンでも根回しゼロでの告白はリスクが高いですが、その場合は普通に友達になったりナンパしたりといろいろ手はあるでしょう。ブサメンはルックスが悪い上に社交性も低いので無理な個人プレーに走りがちで、ストーカーや変な人に思われかねません。
運悪く素敵な出会いに恵まれなかった自分は、いつも運命的な出会い(女の子が空から降ってきたり、訪ねてきたり、許嫁が現れたり、等々)を待ってしまっていました。まあ、待っていなくても、男でも女でもみんなで遊ぶ機会がなかったので結果は変わらなかった気がします。あの頃はただ女子と遊んでみたかっただけなのですが。女子と遊ぶには「告白」を成功させなければならないと思い込んでいたので一人で絶望してました。
婚活してるとこれまでは考えられなかったぐらいたくさんの女性と話しができます。できますが、現実の厳しさも目の当たりにします。イケメンはモテるし、そうじゃなければモテません。毎週、アプローチカードという名の「告白」と撃沈の繰り返し。最初は落ち込みますが繰り返してると慣れてもきます。それが日常になります。
第十四話 はじめてのカノジョ (その3)
第十四話 はじめてのカノジョ (その2)
第十四話 はじめてのカノジョ (その1)
遠坂さんと晩ごはんを二度、食べに行った後、次は昼間に会おうという話になり、暑い日が続いてるから水族館を提案したらあっさり決まった。
サンシャインは昔、行ったことがあるそうなので、品川の水族館にした。他には葛西臨海公園とか八景島とかにもあるらしいが、遠いという理由で却下された。
水族館は子供の頃に小樽の水族館に行ったことがあるが、全然、覚えていなかった。大人になってからは水族館に行こうと思ったことすらなかった。男性が、それも中年男性がひとりで水族館を歩いている光景はなんとなく不穏なものを感じる。うる星やつら2でラムちゃんが一人で水族館を歩いているシーンがあるが、えらい違いだと思う。そういえば、無邪鬼は水族館に何しに来てたんだろう。今更ながら、あのラムちゃんと無邪鬼の出会いのシーンは無理がある気がしてきた。映画を見てる時はキレイなシーンだしまったく気にならなかったが、偶然の出会いにしては無理がありすぎる。世紀末シーンのトラックの運転手もそうだが、あの映画は実は粗がたくさんあるのかもしれない。
話をデートに戻すと、なんでも水族館は駅のすぐそばらしいので、品川駅の改札口で待ち合わせる事にした。