独身アラフォー非モテ男の婚活日誌

友達なし彼女なしのアラフォー非モテ男による婚活活動日誌

第二話 はじめての婚活

猫カフェでの婚活というのは内容はよく分からないが、男女ペアになって猫の写真を撮るらしい。猫は好きだし、カメラも難しい設定は分からないがただ撮るだけならできる。たぶん、なんとかなるだろう。ただ、残念ながら締め切りが過ぎているので、次回の開催を待つしかない。2週間後に無事に申し込み完了し、さらに2週間後にイベントに参加した。
 
その日は定時退社することを決めていた。これまで体調不良以外の理由で定時で上がったことなどなかった気がするが、今日は特別だった。なにしろ彼女ができるかもしれないのだ。これ以上、特別なことがあるだろうか。彼女ができたらどうすればいいんだろう。やっぱり恋愛映画とかを見に行くんだろうか。車はないから彼女の車でドライブとかかな。あとディズニーランドも行ってみたいかも。10年以上東京に住んでるのに行ったことないし。手をつないで歩いたりしたらリア充みたいだな。よしっ、頑張らねば!定時になったと同時に退社した。
 
猫カフェに入ると店内は前に来た時と変わりなかったが、かなり混雑していた。お、結構、カワイイ女の子もいる。でも、おばさんっぽい人もいる。男女それぞれ12名ずつらしい。みんな猫と遊ぶか写真を撮っている。女性は友達同士で来てる人が居るみたいだが、男性はほぼ全員一人で来てるようだ。
時間になると司会者らしい人が、近くの椅子に座るように指示を出す。それから、イベントの内容を説明し始めた。最初にみんなの前で簡単な自己紹介をした後、男女で向かい合わせに座ってお話し、男女ペアでの写真イベントを何回かするという流れらしい。自分はあがり症なので人前で話をするのはできれば避けたいのだが仕方がない。
男性から順に名前が呼ばれ前に出て自己紹介している。なんか年齢まで言ってる人もいる。俺の番になる。
 
「えーと、4番のサトーです。ね、猫が好きでいろんな猫カフェに通ってます。えー、宜しくお願いします。」
 
大勢の前で話をしたので変な汗をかいたが無難に自己紹介を終わらせる。そうそう、最初に番号の書かれた名札を渡されていて、自分の胸につけている。後で気に入った異性の番号を書いてお店の人に渡すらしい。この後、異性とお話する時間になった。何だか「ねるとん」みたいだ。向かいの席に座っているのは乙葉ななせ似のショートカットの可愛い子だった。お店に入った時から一番可愛いと思っていたのでラッキーかも知れない。
 
「サトーです。宜しくお願いします。」
「オトハです。宜しくー(^o^)」
 
お互い挨拶するがなんか明るい。若い女性と話をするのって何年ぶりだろう。コンビニでの「お弁当、温めますか?」とか「お箸はなん膳入りますか?」を除くと。。。昔すぎて思い出せない。やべぇ、なんか緊張してきた。とりあえず何か話そう。
 
「猫、好きなんですか?」
「ええ、大好きですよ」
 
好きじゃなかったら猫カフェに来ないよな。
 
「僕もなんです」
「そうですか・・・(^_^;」
「・・・」
 
えーと、なんの話をすればいいんだろう・・・。仕事なら議題に従って不明点を明確にしていけばいいんだけど、こういう時はどうすればいいんだ?天気の話しても仕方ないし、うーん。
 
「あっ、今、ネコちゃんが凄くいいポーズしたんで写真撮ってきますね!」
「え"っ、あ、はい・・・」
 
おいおい、オレはどうすればいいんだよ。お前はここに何しに来てるんだよ。猫の写真が撮りたいなら普通の日に猫カフェに来ればいいだろうが。なんて自分勝手なんだろう。ちょっと可愛いからってあれはダメだな。
その時、司会の人が次のイベントの説明を始めた。男女ペアになって写真を撮るとのこと。使うカメラは自由でお店から借りることもできたが、自分はデジイチを持参していた。前はコンパクトカメラを使っていたがのっぺりとした写真しか撮れなかったので、思い切ってデジイチを買ってしまったのだ。4万円もしたが買ってよかったと思っている。今日来ている女性が持っているカメラはコンパクトカメラやスマホが多そうだ。そんなカメラで写真を撮っても面白くないと思うが、そんなことを口には出さない。
とりあえず、さっき勝手にいなくなった女性とペアになって写真を撮ることになった。
 
「最初に僕が誘導役になってネコを引きつけるので、写真を撮って下さいね」
「はい、ヨロシクです(^o^)」
 
自分勝手な女性だが一応女性なので先に写真を撮る権利を譲る。いつ誰がこっちを見ているとも限らないのでレディーファーストを守る。ただ、予想外だったのはまったく猫を誘導できなかったことだ。ネコの前でネコじゃらしを振ってもまったく反応なし。無視するか、邪魔なものでも見るように避けるか逃げるかしてしまう。仕方がないのでこっちは追いかけるしかないのだが、傍(はた)から見ると猫じゃらしで猫を追い掛け回しているように見えるんじゃないだろうか。やむを得ず、猫じゃらしで上手く猫をひきつけている他のグループにお邪魔させてもらって写真を撮らせてもらう。その後、猫じゃらし役と写真役の交代になったが結果は変わらず、役割そっちのけで写真を撮っていた。こんなので、婚活になるんだろうか。
 
その後、何度かの男性側の席替えと2回程度の猫写真撮影があった。相手の女性は年齢(20代〜30代)も個性も本当にバラバラで共通しているのはみんな猫が好きというだけだった。やっぱり困るのは会話の内容で、
 
オレ「猫、カワイイですね」
女性「そうですね」
オレ「・・・」
女性「・・・」
 
というやりとりを繰り返していた。他に何を話せばいいんだろう。一人の女性はこっちにまったく話すスキを与えず延々としゃべり続けて時間切れとなった。こっちは「うん、うん」とか「へー」と相槌を打つくらいしかできなかったが、あれでよかったんだろうか。
 
最後に写真の品評会があった。品評会と言っても写真家の先生が各々が撮ったベストショットを褒めちぎるという内容だった。確かによく撮れてるなと思える写真も数枚はあった。しかし、ほとんどは普通に猫が写っているだけの写真だった。そこはプロ写真家だけあってすべての写真を褒めていた。ここは流石プロだなと感心してしまった。
 
途中、メッセージカードに希望する女性の番号を3つと、自分の連絡先を書いてお店の人に提出した。正直、誰の番号を書けばいいのか分からなかったが、ダメ元でオトハさんとその他2名の番号を書いた。お店を出る時にみんなに封筒が渡され、自分宛てのメッセージカードがあれば、そこに入っているハズだった。自分の封筒を受け取ると中に紙が入っている感触があった。もしやと思って駅への帰り道で開けてみたが、メッセージカードはなく、他のイベントの割引券だけが入っていた。残念だが仕方がない。だが、自分が送ったメッセージカードには自分の連絡先が書いてあるので、後でメールが来るかもしれないと淡い期待を抱きつつその日は帰った。
 
その後、自分宛てにメールが届くことはなかった。