第十二話 はじめての女性からの電話(その3)
このメリケンは日本語は話せないので、とにかく英語で聞いて、英語を話すしかない。なんだか偉そうに説明を始めた。
「デートには3つのコツがある。これができればデートは成功したも同然だ。たった3つだ。簡単だろ。」
「その3つというのは、何ですか?」
「まあ、そう焦るな。ちゃんと順番に説明するから」
メリケンは説明を続ける。
「一つ目は目を見て話すこと。人と話すときはちゃんと相手の目を見て話さないとダメだ。」
おいおい。散々もったいつけて、そんな当たり前のことかよ。まあ、でも俺はその当たり前が出来なくてずっと悩んでいたんだけど。それでもオタク婚活パーティーで何十人もの女性と機械的に話をしてるうちに何となく慣れてきた気がする。遠坂さんともちゃんと顔を見て話が出来てたと思うし。まあほとんど聞いているだけでたまに相槌を打つくらいなんだけど。1つ目のアドバイスはあまり役立ちそうにないかな。
「オーケー。それで、二つ目は?」
俺は何か役に立つ話がないかと続きを促した。
「二つ目は、スマイル。いつも笑顔を絶やさないこと。男が真顔だったり、イライラした顔をしてると女性は不安になるんだよ。だからいつもニコニコしてればいい。それだけで女性は安心する。」
「なるほど」
言われてみれば確かにそうかも。これまで合コンや婚活パーティーで周りの人たちと比べて変じゃないかとか、浮いてないかとかしか考えてなかったけど、それって客観的に見るとオドオドした挙動不審者に見えていたかも。婚活パーティーの回転寿しで話をしてた時も、相手のプロフィールを読んだり質問に答えることでいっぱいいっぱいになってて、笑顔とか皆無だった気がする。何というか、仕事モードに近かったかも。スマイルは今後の課題だ。
「それで、最後のコツは?」
「三つ目は、周りをよく見ること。」
ん?それってボールか何かが飛んできたら彼女を守れってことか?よく分からない。
「それはどういう意味ですか?」
「周りをよく見て話のタネを探すんだよ。別に特別な話は必要ないし、専門的なことを話す必要もない。たとえば、カフェとかレストランでしゃれた飾り付けや面白いモノがあったら、それをそのまま話せばいい。コンクリートの打ちっ放しっいいよねとか、天井が高くて解放感があるね、とか。」
なるほど〜。自分が会話に詰まる理由が分かった気がする。相手のこととか周りを全く見ずに、一生懸命考えていたから話すことがなくなっちゃうんだ。これは課題二つ目だ。
最後にメリケンから「グッドラック!」と声援を貰い、今日の英会話は終了。その後、遠坂さんとの待ち合わせ場所へと向かった。
(第十二話 おわり)